せどりが続かない理由は、たいてい仕入れそのものではありません。商品を探している時間です。会社から帰って、スマホでランキングを眺めて、価格を調べて、結局その日は一つも見つからないまま日付が変わる。これを二週間もやると、たいていの人は開かなくなります。
原因は、リサーチという作業が「候補を絞る」と「本当に利益になるか確かめる」の二段構えなのに、その両方を手でやっていることです。前半は完全に作業で、後半は判断。性質がまったく違うのに、同じ時間の中で混ざっている。
前半だけなら、生成AIが肩代わりできます。ただし、AIが出してきた商品をそのまま仕入れると高い確率で在庫が残ります。AIはAmazonの今の価格も、その商品が月に何個売れているかも知らないからです。ここを分かったうえで使うか、知らずに使うかで結果が真逆になります。
私は平日は製造業の管理職として働きながら、休みの日にAIを触っています。この記事では、AIにどこまで任せて、どこから自分の目で見るのか。その境目をはっきりさせて書きます。
AIに任せると、リサーチのどこが減るのか
「AIに丸投げで自動化」と書かれた記事をいくつも読みましたが、実際に減るのは絞り込みの部分だけです。そこは正直に押さえておいたほうがいい。
時間を食っているのは、候補を出すまでの空振りです。ジャンルを決めずにランキングを眺めると、目に入る商品の大半は最初から対象外。大きすぎて送料が乗る、型番が毎年変わる、季節が過ぎたら値が付かない。この「見る前に外していい条件」を頭の中だけで処理しているから遅くなります。
AIはここを削れます。たとえばこう聞く。「Amazonの◯◯カテゴリの中で、季節に左右されにくく、型番の切り替わりが少なく、送料が利益を食いにくいサイズの小分類を10個。あわせて、初心者が手を出さないほうがいい小分類も理由つきで5個」。数分でリストが返ってきます。自分でやれば一時間かかる作業です。
一方、後半の「その商品は本当に利益が出るのか」は減りません。むしろ前半が速くなったぶん、確認に時間を回せるようになる。それが正しい効き方です。
AIが出した「利益が出る商品」を、そのまま信じてはいけない
ここが一番大事なので、先に言い切ります。生成AIに「利益が取れる商品を10個教えて」と聞いてはいけません。
聞けば、それらしい商品名は並びます。でもその中身は、学習した文章の中で「安く仕入れて高く売れる」と語られていた商品の記憶であって、値段の根拠はどこにもない。実際に開いてみると出品者が数十人いて価格が底を打っている、ということが普通に起きます。ブラウジング機能で商品ページを見に行けるAIもありますが、その瞬間の売値が分かるだけで、過去半年その価格で売れ続けたのかは分かりません。
だから、AIに作らせるのは商品名ではなく条件です。聞き方を変えるだけで別の道具になります。
「資金5万円で回すとき、避けたほうがいい商品の特徴を、理由つきで挙げて」。「この10個の候補のうち、仕入れ値が読みにくいものを外して、外した理由も書いて」。「出品者が増えやすいカテゴリの共通点は何か」。どれも価格データを必要としない質問で、AIが本来得意な仕事です。
そして値段と売れ行きは、自分でKeepaのようなブラウザ拡張を入れて確かめます。価格とランキングの推移グラフは無料の範囲で見られて、ランキングが下にギザギザと跳ねているところが、実際に売れたタイミングです。このグラフを開かずに仕入れた回は、だいたい在庫として手元に残ります。
会社員が週2時間で回す3ステップ
平日の夜に机に向かえるのは、現実的には30分が二、三回。それを前提に組みます。そもそも机に向かう時間が取れないという人は、手順より先に1日のどこを空けるかを決めたほうが早いです。
ステップ1|週末の朝、扱うジャンルを1つに決める(30分)。AIを使うのはここだけで十分です。候補の小分類を出させて、除外理由まで書かせる。そのうえで自分が中身を知っている分野を選びます。工具でも、キャンプ用品でも、自分が買ったことのあるジャンルは強い。相場の異常に気づけるからです。
ステップ2|平日の夜、候補を10個だけグラフで開く(30分×2)。ここは人の仕事です。10個と決めるのが大事で、決めないと延々と眺めて何も買わずに終わります。開いて、価格の底とランキングの跳ね方を見て、噛み合わないものはその場で捨てる。残るのは毎回ごく少数です。
ステップ3|週末の夜、その週の結果をAIに読ませる(30分)。仕入れた商品、いくらで買って、何日で売れて、いくら残ったか。これを表にしてAIに渡し、「売れ残った側に共通している特徴は何か」と聞く。ここが一番効きます。自分の判断のクセは、自分ではまず見えません。
この3ステップの中で、AIが触っているのは1と3だけです。ほかのリサーチ作業をAIで削る考え方も基本は同じで、材料集めは任せて、判断は手元に置きます。
AIの話より先に、片づけておく壁が3つある
手順の話ばかり読んでいると見落としますが、せどりはブログやイラスト販売と違って、始める前に確認することがあります。
一つ目は古物商許可です。中古品を仕入れて売るなら要ります。新品でも、フリマアプリや店頭で一度消費者に渡ったものを仕入れて売る場合は古物にあたる、という扱いです。申請先は営業所の所在地を管轄する警察署の防犯係で、手数料は19,000円。不許可でも取り下げても返ってきません(警視庁「古物商許可申請」より。窓口は都道府県ごとにあります)。自分のケースで要るかどうか迷ったら、管轄の警察署に電話で聞くのが早いです。
二つ目は、在庫が現金だということ。これは本業で毎日見ている話でもあります。製造の現場で在庫が積み上がると、帳簿の上では資産なのに、会社の現金は減っている。せどりも同じで、10万円で仕入れて売れなければ、手元の10万円は消えたのと変わりません。副業として怖いのはここで、ブログなら失うのは時間だけですが、せどりは現金が先に出ていきます。最初の資金は、なくなっても生活が揺れない額に切ること。私自身は現金の出ていかない側から先に手をつけて、それでもずいぶん遠回りをしました。その順番の話は別の記事に書きました。
三つ目は税金です。給与を1か所からもらっている人で、副業の所得が年20万円を超えると確定申告が必要になります(国税庁「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」)。売上ではなく、仕入れや送料を引いた後の所得です。せどりは金額が動きやすいので、この線はブログより早くまたぎます。住民税の扱いを含めた実務は先に読んでおいたほうが安全です。
「AIで全自動」とうたうツールをどう見るか
この分野を調べると、リサーチから仕入れ判断まで全部やってくれるという触れ込みのツールや教材が出てきます。全部が悪いとは思いません。ただ、判断材料になるのは謳い文句ではなく、条件のほうです。
月額はいくらか。解約はいつでもできるか。実績として出ている金額は、仕入れ資金をいくら回した結果か。この三つが書かれていないものは、私は保留にします。特に三つ目で、月30万円の利益と書いてあっても、資金を300万円回していれば話がまったく違う。高額な教材に共通する売り方と重なる部分も多いので、勢いで決めないことです。
私が試して気づいたこと
最初にやったのは、いちばん雑な聞き方でした。「Amazonで転売して利益が出る商品を10個」。返ってきたリストを一つずつグラフで開いていったのですが、価格の推移と噛み合ったものはほとんど残りませんでした。半年ずっと横ばいで、売れた形跡が見当たらない。AIが嘘をついたわけではなく、値段を見ずに答えているのだから当たり前です。
面白かったのは、聞き方を「除外条件を先に挙げて」に変えたときでした。候補の数は減るのに、残ったものの精度は上がる。AIは「探す」より「捨てる」のほうが強いという手応えがあって、これは本業での資料づくりとも同じでした。企画を10案出させても使えないのに、10案の中から落とす理由を書かせると、途端に鋭くなる。
もう一つ気づいたのは、自分がどういうときに間違えるかです。候補の中から「これは行けそうだ」と思ったものを並べてAIに共通点を探させたら、値が下がっている途中の商品にばかり反応していることが分かりました。安くなっているという事実と、まだ下がり続けているという事実を、頭の中で混ぜていたわけです。人に指摘されたら言い返したかもしれませんが、自分の選んだリストから出てくると素直に受け取れました。
よくある質問
AIだけでせどりのリサーチを完結できますか?
できません。生成AIは商品の現在価格も販売実績も持っていないので、利益の計算に必要な数字が最初から欠けています。候補を絞るところまではAI、値段と売れ行きの確認は自分の目、と分けてください。ここを混ぜると、それらしい商品を仕入れて在庫が残ります。
資金はいくらから始められますか?
金額の正解はありませんが、決め方はあります。売れ残っても生活が揺れない額にすること。せどりは時間ではなく現金が先に出ていく副業なので、ここを守れるかどうかが続くかどうかを分けます。少額なら回転の速い小さい商品に絞るほうが、経験の数を稼げます。
古物商許可は必ず取らないといけませんか?
中古を扱うなら必要です。新品でも、一度消費者の手に渡ったものを仕入れて売るなら古物にあたる扱いになるので、せどりを続けるつもりなら取っておく前提で考えたほうが安全です。手数料は19,000円で、申請先は営業所を管轄する警察署の防犯係。自分のケースが微妙なら、始める前に電話で確認してください。
AIは無料版で足りますか?有料プランは必要ですか?
足ります。候補の絞り込みと週末の振り返りは、無料の範囲で十分に回ります。お金をかけるべき順番はAIより先に価格と販売履歴の側で、そこが見えないまま高機能なAIを契約しても仕入れの精度は変わりません。使う道具に迷うなら、まずChatGPTで何ができるかを見てからで遅くありません。
AIが出した候補は、どのくらい残りますか?
最初はほとんど残らないと思ってください。私が10個出させてグラフで確かめたときも、価格の動きと噛み合ったものはわずかでした。ただ、これは失敗ではありません。捨てた理由がそのまま次の除外条件になるので、二週目からリストの質が変わります。逆に出てきた候補が全部良く見えるときは、確認のほうが甘くなっています。
売れ残った在庫は、どう処理すればいいですか?
値下げして早く現金に戻すほうがいいです。粘って高値のまま置いておくと、保管の手間と気持ちの負担だけが増えて、次の仕入れ判断まで鈍ります。損切りした金額は授業料として記録に残し、ステップ3の振り返りでAIに読ませる材料にしてください。同じ型の商品で二度繰り返しているなら、そこがあなたの判断のクセです。
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あわせて読むと、始める前の確認と、始めた後の判断がつながります。
まとめ
AIにせどりのリサーチを任せる、というのは正確ではありません。任せられるのは候補を絞る部分と、自分の失敗の傾向を洗い出す部分。値段と売れ行きの確認は、最後まで人の仕事として残ります。この線を引かずに商品名を聞いてしまうと、根拠のないリストを買いに行くことになる。まずは扱うジャンルを一つ決めて、候補を10個だけグラフで開いてみてください。そこで何個消えるかを見た時点で、AIの使いどころは自然に決まります。
